親指サポーターで「デュピュイトラン拘縮」

 

手のひら(手掌)の皮膚を移動しにくくしているのは、皮下にある線維性の手掌腱膜(しゅしょうけんまく)というのものです。これにより、皮膚が移動しにくいので、物が握りやすくなっています。

前腕の屈側中央を走る長掌筋腱(ちょうしょうきんけん)という腱移植(他の腱の不足したところに腱を橋渡しする)に良く利用される腱と手掌腱膜はつながっていて、手掌では、各指に向かって扇状に広がっています。

症状

手掌から指にかけて硬結(こぶのようなもの)ができ、皮膚がひきつれて徐々に伸ばしにくくなります。薬指(環指)、小指に多く見られますが、他の指や足の裏にもできることがあります。親指サポーターで痛みや腫れなどはありません。

 

原因と病態

原因

詳しい原因は不明です。高齢男性、糖尿病患者に多く見られます。一説には手掌腱膜への小外傷の繰り返しで生じるのではないかと考えられています。

病態

手掌腱膜と皮膚の異常です。指を曲げる腱が浮き上がっているように触れるかもしれませんが、それは手掌腱膜が肥厚し退縮したものです。指を曲げる屈筋腱は正常で、異常はありません。

診断

腱の断裂や癒着、腫瘍などのほかの病気と区別する必要がありますが、手の硬結と典型的な指の変形などにより、整形外科医が見れば診断がつきます。

治療

指の変形で日常生活に支障をきたすようになると、皮膚の突っ張りをとる手術(腱膜切除)を行います。手術後には、リハビリや夜間伸展位固定(装具療法)などの後療法が大切です。おおよその手術の適応は手掌を机にぴったりつけられるかどうかを試し、浮いてぴったり着かなくなった頃と考えてください。第2関節が曲がってきた場合には、早めに手術が必要になることもあります。
詳しくは整形外科医にご相談ください。

 

「手の手術をされた方へ」

 

手外科の手術をした後は、指の色を見たり、手の血行に注意しましょう。
手術した後や外傷の後に、その手を心臓より低い位置にしておくとすぐむくんでしまいます。片方の手を上に挙げ、片方の手を下に下げて10秒間後に両手を並べると、下げていたほうがうっ血しているのが判ります。
また、動かすことも血行を良くし、動かせる関節の拘縮を予防します。

ギプスなどをしているときでもギプスのあたっていないギプスから出ている指は親指サポーターで動かすことが大切です。肘や肩も固定されていない場所は時々動かすように心がけましょう。

手術後に注意すること

皮膚の色

ギプスや包帯から出ている指などの皮膚の色を観察します。 ピンク色なら大丈夫ですが、赤黒かったり、蒼白になっていたら、手術をした病院に連絡してください。

血行不良を起こさないために

運動による血行改善

麻酔が覚めて、指の運動が許可されている場合には、指は積極的に動かして下さい。

指輪の禁止

手術後は指が腫れるため指輪はしないでください。循環障害を起こすことがあります。

強い痛み

痛み止めの薬を飲んでも痛みが取れない場合には、手術をした病院に連絡してください。

患肢挙上

手術後は手術した手の部位を心臓より高く上げておくことが原則です。 寝ているときは枕などを利用して心臓より高くします。座っているときも歩くときも心臓より高い位置に保持します。

 

関節運動(血行改善と拘縮予防)

手指や肩、肘の運動が許可されている場合には積極的に動かしてください。 肩の運動な手が頭に届くくらい積極的に動かしてください。 指の運動は指先が手のひらに届くように十分に行います。

リハビリの重要性

手の手術や外傷の後はリハビリがとても重要です。 医師の指示に従ったリハビリテーションが必要です。 水治療法、装具療法、作業療法などがあります。 ただし、痛みが強い場合には運動は中止してください。

「ドケルバン病親指サポーターで(狭窄性腱鞘炎)

 

母指(親指)を広げると手首(手関節)の母指側の部分に腱が張って皮下に2本の線が浮かび上がります。ドケルバン病はその母指側の線である短母指伸筋腱と長母指外転筋が手首の背側にある手背第一コンパートメントを通るところに生じる腱鞘炎です。

症状

手首(手関節)の母指側にある腱鞘(手背第一コンパートメント)とそこを通過する腱に炎症が起こった状態で、腱鞘の部分で腱の動きがスムーズでなくなり、手首の母指側が痛み、腫れます。母指を広げたり、動かしたりするとこの場所に強い疼痛が走ります。

注:短母指伸筋腱は主の母指の第2関節を伸ばす働きをする腱の1つです。
  長母指外転筋腱は主に母指を広げる働きをする腱の1つです。

 

短母指伸筋腱(たんぼししんきんけん)
 主に母指を伸ばす働きをする腱の一本です。
長母指外転筋腱(ちょうぼしがいてんきんけん)
 主に母指を広げる働きをする腱の一本です。
腱鞘(けんしょう)
 の腱が通るトンネルです。

原因と病態

原因

妊娠出産期の女性や更年期の女性に多く生じます。手の使いすぎやスポーツや指を良く使う仕事の人にも多いのが特徴です。

病態

母指の使いすぎによる負荷のため、腱鞘が肥厚したり、腱の表面が傷んだりして、さらにそれが刺激し、悪循環が生じると考えられています。
特に手背第1コンパートメント内には、上記の2種類の腱を分けて通過させる隔壁が存在し、これがあるために狭窄が生じやすいです。

 

診断

上記の部位に腫脹や圧痛があり、母指と一緒に手首を小指側に曲げると痛みがいっそう強くなることで診断します(フィンケルシュタインテスト変法)。
正しくは母指を写真のように小指側に牽引したときに痛みが強くなることで診断します(フィンケルシュタインテスト)。

 

 

「ガングリオン」

 

ガングリオンはなかにゼリー状の物質の詰まった腫瘤です。
典型的なものは手関節背側(甲側)に生じるガングリオンです。これは手関節の関節包(関節を包むふくろ)に繋がっています。
その他のガングリオンのできやすい場所としては、手首の母指(親指)側の掌側の関節包やばね指の生じる指の付け根の掌側の腱鞘のあるところです。

症状

関節の周辺や腱鞘のある場所に米粒大からピンポン玉大の腫瘤ができます。軟らかいものから硬いものまであります。通常は無症状なことが多いのですが、時々、神経のそばにできると神経を圧迫して、しびれや痛み、運動麻痺などを起こします。
手を使いすぎると親指サポーターで腫瘤は大きくなることがあります。

 

原因と病態

原因

ガングリオンは関節包や腱鞘の部分から発生します。若い女性に多く見られますが、必ずしも手を良く使う人に見られるわけではありません。

病態

 

関節液や腱と腱鞘(腱の周りにある浮き上がり防止の鞘、ベルト通し様)の潤滑油である滑液がガングリオンの袋に送られ、濃縮してゼリー状になります。関節や腱鞘に生じるものは、関節や腱鞘に繋がっています。特に関節からできるものは、関節包に繋がる長い茎で繋がっていることがほとんどです。
そのほかにも、ガングリオンは身体中の至る所に生じます。骨や筋肉、神経に出来るガングリオンもあります。これらは粘液変性したものが融合して生じると考えられています。

診断

腫瘤があり、注射針を刺してゼリー状の内容物が吸引できればガングリオンと診断できます。
なかには外側から触れない小さなガングリオンもあります。そのような場合は診断がつきにくいので、MRIや超音波検査をして診断します。手関節の痛みがいつまでも続くオカルトガングリオン(不顕性のガングリオン)もその一つです。

治療

ガングリオンは腫瘤のみで無症状なら、放置しても心配はありません。ただし、診断をしてもらうためにも整形外科を受診しましょう。大きくなるもの、痛みが強いもの、神経が圧迫されて神経症状があるもの(痛みや運動障害など)は治療が必要になります。

保存的療法としては、ガングリオンに注射針を刺して注射器で吸引し内容物を排出します。何回か吸引排出する治療を行ううちに治ることもあります。ガングリオンに力を加えて押し潰す治療法もあります。

それでも繰り返し内容物が溜まるようなら、手術を行います。手術をしても再発する可能性もあります。再発を防止するためには、上記の茎を含めたガングリオンの摘出が必要であり、関節包の周囲に生じているガングリオン予備群の娘シスト(別の小さなシスト)の存在にも留意しなければなりません。